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The FlightGear Flight School Version 0.0.3

第2章 基礎

2.1 FlightGearの基本

2.1.1 インストールと始動

ビルド済みバイナリ、またはソースコード(コンパイルが必要)からのFlightGearのインストールは、Getting-Started- Manual(訳注: 現在はThe FlightGear Manual(邦訳: FlightGearマニュアル)に統合)の中でしっかりと文書化されています。 FlightGearには、航空機をメニューから選択する仕組みが存在しないので、シェルからプログラムを起動するのがベストでしょう(訳注: いくつかのOSでは起動用プログラムを利用できます)。 これによりユーザは、FlightGearに対する様々なオプション設定を飛ばすことが出来ます。 これらのオプションについては必要に応じて後の章で説明します。 単純にマニュアルに従ってFlightGearを起動してください。

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FlightGear開始時の画面
 

注1:MS Windows:スタートメニュー→全てのプログラム→FlightGear0.9.10→FlightGear Launcher

 
 

2.1.2 概要

プログラムを始動したとき、あなたはコックピットの中に座っているでしょう。デフォルトではセスナ172(2D)です。 あなたの正面に、全て違った計器、スイッチ、それとノブが見えるでしょう。 あなたは外を見ると、サンフランシスコ国際空港(ICAOコード:KSFO)が見えるでしょう。 shiftキーと数字のキーを同時に押すと以下の表に書かれている通り、いろいろな方向を見ることが出来ます。

 
中央
Shift+7Shift+8Shift+9
Shift+4Shift+6
Shift+1Shitf+2Shift+3

(NumLockオフの時に有効)

 

(訳注:表の形式をより視覚的に分かりやすいように変えてみた。別のキーの組み合わせもあるので、「訳)FlightGearショートリファレンス」を参照してください。)

 

あなたはしばしば、エンジン音をちょっと邪魔に感じるかもしれません。 「p」キーを押してシミュレーションをポーズするか、「??」を押して(訳注:訳者環境では何も起こらなかった)プログラムの出す音をミュートにしてください。
「v」キーを押すと、視点をコックピット、追尾視点(chase view,hericopter view)、タワーからの視点(tower view)の間で切り替えます。
特に、しばしばタワーからの視点で飛行機を見つけるのに、「x」でのズームイン、「X」でのズームアウトは大変役に立ちます。
コックピット視点に戻って、あなたは計器盤を「P」キーで完全に消すことができます、もしくは「s」キーで重要な計器のみ表示することが出来ます。
これらのキーの大半はオン/オフ切り替えスイッチのように働きます。例えば、「P」キーを一度押すとコックピットの計器盤を消し、もう一度押すと計器盤がもう一度表示されます。
大体、このチュートリアルの間、必要なときに「定義済みのキーとコマンド」は説明されるでしょう。
プログラムを早く利用したい人は、直接Getting-Started-ManualかShort Referrenceを読むべきです。

2.2 航空力学

離陸時の重量が400トンを超えるボーイング社の747のような重い飛行機が、どうして飛ぶことができるのか、不思議に思ったことはありませんか?ちょっと見ただけでは、そのように感じるでしょう。しかし、航空力学と物理学を紐解いてみれば、どのような力によって航空機が空中に支えられているかが、明らかになることでしょう。

2.2.1 空気

我々がその中を飛行していく物質について名前をつけよう。空気です! これは、まったく当たり前に聞こえるかもしれませんが(事実そうなのですが)、あらゆる飛行において不可欠です。 第13章で天気に関する詳細について議論するでしょう。
空気は違うガスの混合物です。それは、体積比で78%の窒素と、21%の酸素、そして1%の不活性ガス(ヘリウム、アルゴン、ネオン)、二酸化炭素。 これに加えて、空気はいくらかの水蒸気(体積比0%〜5%)を含んでいます。この湿度の値は、他のガスの割合にも依存します。(不正確) 空気中のこれらの全ての分子の重さのため、圧力は大気圏内の機体の全てに作用しています。また、空気自身も。 ガスの圧縮性のために、高度によって空気の圧力と密度が異なっています。また、天候の変化によっても変わってきます。飛行の多くの局面で、空気密度が重要になるので、後のセクションを見てください。 航空機の多くの計器では、空気圧もしくは圧力差で働いていて、そしてそれは空気の密度に依存していて、またエンジンの効率も密度に依存します。

2.2.2 4つの力

基本的に、飛行で飛行機に作用する4つの力があります:揚力、重力、推力、そして空気抵抗です。 それらのうち、揚力と重力、推力と空気抵抗はお互い反対方向に働いています。正常な水平飛行をしているとき、推力=空気抵抗、揚力=重力となる。(訳注:原文を直訳すると「〜これらの4つの力が釣り合っている」ですが,勘違いするのを防ぐために表現を変更) これは、上昇も下降もせず、加速も減速もしていないということを意味しています。

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飛行機に働く4つの力
 
  • 揚力
    大抵、揚力は航空機を上に持ち上げる力です。 物体が空気中や何らかの流体の中を動く時、物体の周りの空気の流れは厳密に均一でな限り、物体は持ち上げられるか、地面に向かって押し付けられるかのどちらかでしょう。 例えば、動いている車の窓から手を出して、前側を上向きに指すように、少し手を曲げてください。あなたの手は上に上がるでしょう。これは、空気の流れを下に曲げた反作用を受けているからです。 (訳注:安全には十分注意しましょう。) また、この効果は物体の表面の形を変えることでより高めることが出来ます。 航空機の主翼は平坦ではなく、カーブしています。今、主翼に空気の流れを前から当てると、主翼の前縁で空気の流れが分割されます。すると、翼の下側の流れが粘性により上面に流れ込もうとしますが、後縁が鋭くとがっているために剥離します。そして、後方に渦を放出することになります。すると、ヘルムホルツの渦定理(エネルギー保存則から得られた)によって後方の渦とは逆周りで、同じ大きさのエネルギーの、翼の周囲を回る渦が発生します。その渦は、主翼の前縁から流れてきた一様流と重なり合い、翼上面は流速が早く、翼下面は流速が遅くなります。すると、ベルヌーイの定理で圧力差が発生します。
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主翼と空気流、そして揚力
 

この、空気の流れを下に曲げた反作用と、翼の圧力差の合計が結果として揚力となります。この揚力は通常翼の上に向かって働きます。 この力は迎え角、翼型、対気速度、翼の形状、翼面積、空気密度などの幾つかの要因に依存しています。

(訳注:もともとの文書に正確でない表現があったため、秀和システム「図解入門 よくわかる航空力学の基本―飛行機はなぜ飛ぶのか?演習問題付き (第2版)」 ISBN 978-4-7980-2449-3 を参考に本項目を書き直した)

 
  • 重力
    重力は揚力とは反対側に働く力で、常に地面に向かって働いています。
 
  • 推力
    推力は飛行機を前方向に動かす力です。多くの場合(滑空機を除く)推力は1台以上のプロペラ付きの(ピストン)エンジン、もしくはターボプロップ、ターボジェットエンジンから発生します。
    (訳注:現在はターボジェットエンジンは戦闘機の分野においても使われておらず、低バイパス比のターボファンエンジンを使用する場合が多い)
    私たちはシンプルなピストンエンジンから始めようと思います。 他のタイプのエンジンに関する議論は、後の適切な章でなされるでしょう。 プロペラの動力はエンジンより供給されます。エンジンの構造は自動車用のエンジンとほぼ同じです。 プロペラの回転により空気を飛行機の後ろに押し出します。ニュートンの作用・反作用の法則(この場合、プロペラが空気に与えた力=飛行機が前に進む力)により、飛行機は前に進むでしょう。
     
    具体的に、飛行機はプロペラを回転させることによって前に進むことができるのでしょうか。それは2〜4枚で一つの翼を形成しています。 「翼」という表現はこの文脈においては間違いではありません。プロペラに付いた2枚の翼が「揚力」と同様なものを生じさせています。(訳注:揚力も生じるが、プロペラが推力を生む大きな理由は空気を後ろへ掻くことによる反作用であり、キャンバはプロペラ表面での気流の剥離を抑えるものだという見方もあります。) 上記の「揚力」の説明との違いは、プロペラの回転は飛行機の前後軸上にある点です。 (訳注:多発固定翼機ではプロペラの回転軸は飛行機の前後軸と平行になります。また、V-22などの特殊なものやヘリコプターは除外。) プロペラが回転するとき、空気は翼の前部から後部(主翼で例えるなら、上側から下側)、側面に分かれて流れます。その結果、飛行機を動かす力をもたらします。 揚力と同様に、プロペラによる推力も空気密度に依存しています。もし密度が高いならば、より多くの空気の分子(窒素分子、酸素分子など)を動かすでしょう、そしてより大きな推力を得られるでしょう。 私たちが首尾よく最初の始動をしたとき(訳注:翻訳自信なし。シミュレーションを開始した時のことだろうか?)、があなたは高い山で必要な離陸距離と、海面高度で必要な離陸距離を比較することが出来ます。 私たちは、後のほうにある「Flight Plannning」の項目においてこの面からも議論したいと思います。
     
  • 空気抵抗(この項全てにおいて翻訳に自信なし。誤訳があれば修正願います。)
    訳注:日本航空の航空実用辞典(http://www.jal.co.jp/jiten/dict/p051.html#01-02)も参照願います。
    空気抵抗は推力の反対方向に働く力です。物体が何らかの流体、、たとえば、空気や水やアイスクリームの中で移動するときに常に物体に作用します。 空気抵抗は機体のサイズ、表面の状態、速度、空気密度に依存しています。 抗力は4つの異なった形態に分けられます。
    • 形状抗力 (圧力抗力と、以下に分けて書かれている摩擦抗力に分けられる)
      • 摩擦抗力
    • 誘導抗力
    • 干渉抗力
       
    • 形状抗力
      空気中を動いている物体は、空気に対する障害物とみなされます。 物体によって空気は減速され、物体の表面を回り込み、物体の後方で合流し、渦を作ります。 この形状抗力の(N、kgf、あるいはlbfで表される)大きさは速度、機体の形状、表面の状態に依存します。 形状抗力の値はcw値であらわされます。 cw値とは、平板を流れに垂直に立てたときの値を1とした相対的な値です。 球形ならば、cw値は0.5まで減少します。 非常に良い涙滴形では、面積が同一の平面に対して、値は0.05にまで減少します(訳注:下図の右下の例)。
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      図:形状の違いによる空気抵抗とcw値
       
      抗力は面している面積の大きさに比例して、速度の2乗に比例します。 もし速度が2倍になったならば、抗力は4倍に増えます。形状抗力は4つの抗力のなかで最も大きな抗力です。 このアドバイスは航空機の設計者に飛行機の形状抗力が小さくなるようにさせます。たとえば引き込み式の車輪を使うことです。
       
      • 摩擦抗力
        機体の回りを空気が流れるとき、機体と空気の間に摩擦が発生します。摩擦の大きさは、表面処理に依存します。塗装かワニスで仕上げされた面はとても摩擦抗力が小さくなります。
      翼の上面と下面の圧力の差が翼端で補償されます。(訳注:圧力が高い翼下面から、圧力の低い翼上面へ、翼端側から回り込む現象が起こります。これを翼端渦;induced vortexなどと呼びます。) この補償は後方乱気流を引き起こします。この乱気流は機体と主翼の重量と速度に依存します。 最も大きな後方乱気流は、大型機がフラップを全部展開して低速で飛んだときに発生します。 誘導抗力に加えて、乱気流は大きなリスクを追従する飛行機に与えます。ファイナルアプローチのとき、飛行機同士の距離を数マイル空けることで、危険を減らすことが出来ます。 現在の設計者たちは、翼の末端を改良することで誘導抗力を最小限にしようと試みています。(翼端やウィングレット;小翼)
       
      飛行機の全ての部品は抵抗を発生します。これらの抵抗は互いに干渉します。しばしば抗力が互いに干渉して、より強い抗力になったり、お互いに打ち消しあったりします。 そして、全ての部品が単独で発生させる抗力と実際の抗力の差は干渉抗力と呼ばれています。 現在の設計者は、部品同士や他の面との結合部を滑らかに形を変えることによって、干渉抗力を減らすことを試みています。 (訳注:そのために胴体と主翼との結合部などには,流れをスムーズにするためのフィレット(fillet)が取り付けられていることが多い -本カッコ内の訳注は日本航空 航空実用辞典より引用)
       
      良い表面と形状は、より干渉抗力と誘導抗力を低く、飛行機のトータルでの抗力を低くします。 総抗力が非常に低いなら、より早く、より少ない燃料で飛行機を飛ばします。
       
       

2.3 飛行機

飛行機のサイズによらず、大体のレイアウトは、小型のセスナもコンコルドも同じです。

2.3.1 一般的セットアップ

通常、飛行機はボディーと呼ばれる、チューブ状の構造物からなります。(訳注:それに主翼や尾翼、エンジン、降着装置を艤装する) ボディーには操縦室、客室、貨物室、電装品などのスペースが与えられています。

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セットアップ済みの飛行機
 

翼(主翼)、着陸装置、そして尾部を搭載した胴体。 大抵の(小型の)飛行機は主翼の配置によって分けられます:

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異なるタイプの主翼の配置
 

翼は燃料タンク、フラップ(低速時には揚力を増加させるが、高速時には抵抗となるので格納する)、スポイラー(降下時や着陸後の制動時に揚力を減らす)、エルロン(補助翼:左右のロールを調整する)が含まれています。 尾部はボディーの後部に装備されます。尾部の内容はエレベータ(昇降舵)とラダー(方向舵:機首の向きを変える)です。通常エレベーターはボディーの側面、ラダーはその上に装着されます。

この他には、T形尾翼はエレベーターがラダーの上に取り付けられ、V形尾翼はエレベーターとラダーを兼ねた翼が対角線上に2枚付いているものがあります。

 
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図:異なったタイプの尾部
 

翼あるいはボディの下では、降着装置(訳注:ギア、或いは脚と呼ばれることが多い。陸上機なら通常車輪だが、雪上仕様の飛行機はソリが装備されていることがある。また、水上機ならフロート。) を見つけることが出来ます。高度な航空機には、空気抗力を減少させる格納式の降着装置があります。 大部分の飛行機は、前の方に一つのギア(nose gear)と中央部に数個のギア(main gear)を持っています。地上走行速度以下では、飛行機は前部ギアによって旋回します。(訳者追記:車の前輪でカーブを曲がるのと同様。) 幾つかの、小さな飛行機は尾部の下に一つのギア;(翻訳自信なし)が取り付けられています。(訳注:尾輪という。前2輪、後ろ1輪の3輪。Piper J3 Cubなど尾輪を装備した方式を尾輪式という。)

エンジンはボディーの前部、または翼に取り付けられる事が多いです。(訳注:A-10など、左記とは違う場所にエンジンが取り付けられる機種もあるため、訳者による表現の変更を行った。)

 

2.3.2 コントロール

私たちは航空力学について少し詳しくなったので、何によって飛行機が飛ぶのかを知っています。しかし、どうそれをコントロールすれば良いのでしょうか? このセクションで、飛行機の基本的なコントロールについて議論します。それらの仕組みが空気中でどのように働いているかは、後の章において見ることが出来ます。 飛行機が移動できるのは3次元空間の中なので、その動きには上下、左右、前後の6つの基本的な向きがあります。

操縦棹を後ろに引くと飛行機は上に、前に押すと下に動きます。これは尾翼に取り付けられたエレベーターを動かします。例えば、エレベーターの(後ろの)端が上向きに動くと、飛行機の後ろは揚力によって下向きに押されます。 尾部が下がると、飛行機は(後述の左右軸を中心に)回転し、飛行機と空気流の間の角度(迎え角:Angle of Attack,AOA)が増加します。それにより飛行機は上昇を始めますが、それは非常に少しの間のみです。その後、飛行機は速度を失います。(訳注:「Then the plane will lose speed.」の誤記だと思われる。原文:Than the plane will loose speed.)
主翼の揚力は速度に依存していますが、その速度は減少します。 それは上り坂を車で登るのとほぼ同じです。あなたがパワーを増やさなければ(=アクセルをもっと踏み込まなければ)、車は上昇のため減速します~。 従って、上昇し続けるにはしばしば飛行機の出力の調整が必要となります。 多くの場合、高度を落とすためには出力を絞るだけで十分です。速度が減少すれば、揚力もまた減少するからです。

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セットアップ済みの飛行機
 

主翼の翼端にエルロンがあるのが見えるでしょう。
エルロンは操縦桿によって横方向の移動をコントロールされます。操縦桿を右に倒すと、左のエルロンが下に降りて、右のエルロンが上に上がります。 このケースでは前後軸の周りを機体が回転します。この傾きによって飛行機にカーブして飛行します。
飛行機を上下軸の周りを回転させるには尾部の後ろに付けられているラダーを使います。ラダーはペダルによってコントロールされます。 右ペダルを前に押すと飛行機は右にカーブし、左のペダルを押すと左にカーブします。両方のペダルは一組で動いており、片方のペダルを前に動かせば、もう片方は後ろに下がる仕組みになっています。

小さな飛行機では、ペダルは地上でターンするのにも使われます。大きな飛行機では、独立したハンドル(ティラー)によって前車輪の操向を行います。(訳注:http://www.jal.co.jp/jiten/dict/p128.html#01も参照。)
ペダルの上端はタイヤについているブレーキを作動させるのに使用します。また、大きな飛行機はスポイラーと呼ばれる「空力ブレーキ」を持っています。スポイラーは主翼の上面に取り付けられ、主翼の周りの空気の流れを阻害して空気抵抗を増加させます。(訳者追記:スポイラとエアブレーキは別物で、スポイラは翼面に抵抗板を立てることで意図的に気流を剥離させ揚力を減ずるとともに、それ自身や気流の剥離による空気抵抗を増加させるもの。エアブレーキは主に胴体などの一部分を気流に対して突き出すことで空気抵抗を増加させるもの。) これに加え、より重い飛行機は逆噴射装置(スラストリバーサ,thrust reverser)を地上でのブレーキのために持っています。その名の通り、逆噴射装置はエンジンの推力を逆向きに切り替えます。(訳注:ただし、前進離陸推力の3割〜5割程度の力しかない。逆噴射装置という訳よりも逆推力装置が適切か。)

2.4 コックピットレイアウト総合

ほとんどの飛行機は、外側のレイアウトがよく似ているのと同様に、コックピットもよく似ています。 また、大きな飛行機は少なくとも2人の「パイロット」が乗務します:機長(captain,左側席)と副操縦士(the 1st officer,右側席)です。 セスナC172の様な小さな飛行機の場合、機器の大半は左席の正面に置かれ、右側の席には操縦桿しかありません。 しかし、コックピットは狭いため、右側席の人は全ての機器を眺めることが出来ます。

より大きな飛行機には、主計器パネル以外の物があります。メインエンジンの制御が主にセンターコンソールに置かれ、電気機器はしばしばオーバーヘッドパネルか、機長と副操縦士の席の横の側面パネルで見つけられます。

2.4.1 計器

パイロット前方に、最も重要な計器があるのが見つけられるでしょう。これらの計器を詳しく見る前に、私たちはこれらが作動する方法について短く見ていくつもりです。 これらの計器は2種類の違うタイプに分けることが出来ます:圧力で作動する計器とジャイロスコープによって作動する計器です。 高度計、昇降計、そして対気速度計は圧力によって作動し、ディレクショナル・ジャイロ(定針儀、いわゆるコンパス)や姿勢ジャイロがジャイロスコープで作動する計器です。

 

圧力計器
圧力で作動する計器は非常に単純です。それは針の付いた隔膜(ダイヤフラム)を持っていて、(訳注:内側が)基準となる圧力の空気で満たされています。また隔膜の外に大気があります。 大気圧とダイヤフラム内の空気圧が等しいなら、指針は真ん中の位置を指します。大気圧がダイヤフラム内の空気圧よりも高いならば、ダイヤフラムが押されて針が動きます。逆も同様です。

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圧力差による計器の動き
 

このシステムの利点は電源など、「空気圧以外のもの」から独立していることです。 大きな欠点は、これらの器具は空気圧に依存していることです。(空気圧は決して一定ではありません)

 

ジャイロ計器(翻訳自信なし)
あなたは昔コマを回したときに、回転している軸を動かそうとしたことはありませんか? 動かしてみると、コマの回転軸に上を向く力が働きます。 これが一般的に飛行機で使用されるジャイロ計器の原理です。 (原文:「これは全てのジャイロスコープの原理です。」だが、近年では光学式ジャイロが航空機等にも使用されているので変更。)
それらの持つ高速で回転する軸は、位置および方向の変化に追従します。一定の速度で回るジャイロに関して働く慣性モーメントを検出して測定に使用することが出来ます。 しかし残念ながら、地球の自転もまた、ジャイロに力を加えます。

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ジャイロの軸に働く力と、それに反応して発生する力
 

ジャイロスコープ計器は電気、あるいは真空ポンプによって駆動されます。これは常に電力、あるいはエンジンの駆動が必要が必要なことを意味しています。

 

高度計

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高度計は、海面からの気圧高度を得るために使用されます。 実際には、それは直接高度を測るのではなく、飛行機の外の気圧を測ります。高度が高くなると気圧が下がるので、気圧の差を高さの差と見なすことが出来ます。 高さはフィート(feet,ft)の単位でで測定されます。 この高度計の場合、目盛りは20フィートごとに付されていて、100フィートごとに数字が付されています。 短い針は1000フィートの位を、長い針は100フィートの位を指示しています。 高度計の右側上部の小さい窓に、現在設定されている気圧が表示されています。 現地の(海面高度、もしくは地上での高度を0になるように)大気圧に合わせて設定するには、計器左下の小さいノブで調整します。 (訳注:海面からの気圧高度を0とする方式をQNHセッティングという。また、地上で気圧高度計が0になるセッティング方式をQFEセッティングという。- 参考文献:http://www.jal.co.jp/jiten/index.html) 基準は29.92inHg、もしくは1013hPaです。(訳注:この方式をQNEセッティングと呼ぶ。14,000ft以上での巡航時にはこの方式を使用する。それ以下ではそのエリアのQNH。)

 

昇降計(垂直速度計)

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昇降計は、飛行機の実際の昇降状況を示します。単位は、フィート毎分です。 (訳注:原著では「Attitude Gyro」となっていたが、内容・図が昇降計のものだった。)

 

対気速度計(参考文献:http://howtofly.netfirms.com/ および http://www.jal.co.jp/jiten/dict/p267.html#02) 飛行の間、常に飛行機の速度を知ることは重要です。それを示す計器が、対気速度計です。 しかし、速度計のような'簡単な'器具さえアビオニクス(avionics、aviation+electronicsの合成語で航空用電子工学のことである。)でさえ分かりにくいです。 車の速度計の場合、非常に単純に実際の速度を計ります。車軸の回転数とタイヤの円周の長さから簡単な計算をして、大体の速度を得ています。 しかし、航空機ではどうやって速度を得るのでしょうか?まず、人は飛行機の「異なった速度」を区別しなければなりません。 「異なった速度」?それはどのようにすれば可能ですか?確実なのは、「飛行機は「ある速度」で飛ぶことが出来る」ということです。 しかし、航空には速度を測定するいくつかの方法があります。

  • 対地速度(Ground Speed:GS)
  • 指示対気速度(Indicated Airspeed:IAS)
  • 較正対気速度(Calibrated Airspeed:CAS)または修正対気速度(Rectified Airspeed:RAS)
  • 等価対気速度(Equivalent Airspeed:EAS)(訳注:原文にはない)
  • 真対気速度(True Airspeed:TAS)

対地速度は、車の速度と非常によく似ています。2点間の距離を所要時間で割ってください。航空では、速度はノット(knot,kt)で計測されます。(1ノット=毎時1海里(1海里=1nmとも書かれます。)) 速度計が表示するのは指示対気速度です。(その名前が示すとおりです!!))当然、この計測システムは誤差を含みます、配管でのロス等のため、指示対気速度は実際の対気速度ではありません。 それらの誤差の補正を行って得た速度が較正対気速度(CAS、米国)、または修正対気速度(RAS、英国)です。 これらの較正された対気速度は航空機に対する速度の規定(離着陸速度など)に使用されます。 飛行機のマニュアルにIASとCASの差が書かれています。誤差が極めて小さいとき、したがって大部分で誤差を無視できます。 低速で高迎え角で飛ぶ状況に限って、誤差は10〜20%に達しているかもしれません。 しばしば、速度の表現ではしばしば頭に'K'がついています。(例:IAS→KIAS) これは、速度がノット(knot)であることを強調しているだけです。 対気速度計は圧力で働く器具です。そして、計器が示す対気速度は空気密度に依存します。 したがって、残念ながら海面高度(MSL;Mean Sea Level)でだけCASはTASと等しくなります。 高度が高くなるに従って大気密度は低くなるため、CASとTASの差は大きくなります。 誤差は、1000フィートにつき2%づつ増えていきます。従って、4000フィートでは、誤差は8%になります。 このとき、IASで120ノットで飛んでいれば、それは真対気速度で130ノットであることを意味します。

 
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対気速度計
 

対気速度計の目盛りは、白、緑、黄色の範囲と、赤い線で示されています。これらの色分けは、いくつかの操作が出来る速度を指示しています。
これらの範囲は、航空機ごとに異なります。

  • 白色の範囲
    • フラップを完全に下ろして飛行できる速度を示しています。下限は最大重量でフラップ・車輪を完全に下ろした状態での失速速度(VSO)です。
    • 上限はフラップを出した状態でこの速度を超えてはいけない速度です(VFE)
  • 緑色の範囲
    • 通常運用する速度域です。下限はフラップを上げ、車輪を格納した状態での失速速度(Vs1)です。
    • 上限は最大巡航速度(VNO)です。通常はこの速度を超えてはいけません。
  • 黄色の範囲
    • 穏やかな大気でのみ使用できる速度です。天気、速度ともに注意して運用してください。 また、急な機動をとると機体がダメージを受けるおそれがあります。
  • 赤色の範囲
    • 超過禁止速度(VNE)です。(あなたが飛行機を壊したくない限りは)何があってもこの範囲を使用してはいけません。
       

2.4.2 オーバーヘッドパネル

セスナC172よりも大きな航空機にはオーバーヘッドパネルがあります。飛行機によってはこのパネルで電装品、照明、空調またはエンジン制御のためのスイッチを見つけるでしょう。

2.4.3 センターコンソール

センターコンソールでは通常、エンジンやトリムの調整の操作部を見つけることが出来るでしょう。また、オートパイロットや無線機等もここに位置しているでしょう。

2.4.4 ラジオスタック

通常、無線、トランスポンダー(訳注:管制塔などにスコークナンバーを送ったりする機器)と航法装置(含むGPS)のようなすべてのコミュニケーション器具は、同じ場所にあります。
C172に関しては、あなたは計器パネルの右側でこれらの器具を見つけるでしょう。


編集メモ

  • Flight Schoolの翻訳作業用に雛形を作成しました。2007/07/13 toshi
  • 翻訳済み部分までアップロード 2007/07/17 sambar
  • toshiさんのご協力により誤訳部分、誤字脱字の修正 2007/07/17 sambar
  • 微妙な誤訳があったので修正 2007/11/26 sambar
  • 誤訳修正、追記など 2008/01/21 takehiro
  • 誤訳修正 2008/02/22 sambar
  • リンク先を新サーバに変更 2008/06/15 toshi
  • 原文に正確でない表現があったのを見つけたので修正2009/12/30 sambar
  • 訳)FlightGearショートリファレンス へのリンク修正 -- toshi 2010-04-04
  • 少し読み難い部分を自然な日本語にしました --- 2023/10/23 linuxmetel

添付ファイル: filefsc-012.jpg 2391件 [詳細] filefsc-011.jpg 2299件 [詳細] filefsc-010.jpg 2315件 [詳細] filefsc-009.jpg 2534件 [詳細] filefsc-008.jpg 2401件 [詳細] filefsc-007.jpg 2593件 [詳細] filefsc-006.jpg 2475件 [詳細] filefsc-005.jpg 2629件 [詳細] filefsc-004.jpg 2490件 [詳細] filefsc-003.jpg 2940件 [詳細] filefsc-002.jpg 2990件 [詳細] filefsc-001.jpg 3128件 [詳細] filefsc-000forupload.jpg 2749件 [詳細]

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Last-modified: 2023-10-23 (月) 00:36:34 (179d)